ウィスキーにトライ
「今度、イギリスに行くんですよ。
ロンドンとエジンバラに行きたいんですが、
せっかくだから、スコッチウィスキーのことを予習してから行きたいんです。」
イギリス旅行が決まって、今まで自分とは無縁だと思っていたウィスキーに興味が出た。
スコットランドはウィスキー誕生の地である。
蒸留所見学もできれば…と思っていたが、
ほとんどの蒸留所は交通の不便な場所にあるため、
車での移動手段しかないらしい。
彼の地では一人旅の予定なので、ツアーでもない限りちょっと難しそうだ。
「…で、スコッチウィスキーのことはなんにもわからないので、
とりあえず、ハジから飲んでみようかなって(笑)」
こんな大雑把な注文にも、バーテンダーの皆さんは真摯に答えてくれる。
(いや、あきらめられているだけなのか?)
「でしたら、シングルショットではなく半分の量のハーフにして、
いくつか飲み比べてみるのが良いと思います。」
「え?そんなことができるんですか?」
「はい。できますよ。」
「じゃあそれでお願いします。」
「どのウィスキーの銘柄にしましょう。」
「全然わからないから、ポピュラーなやつから。」
そう頼むと、バーテンダーさんは少し考えて、
背後の棚からボトルを3本選び、私の前に並べた。
なんか聞いたことがあるような無いようなウィスキーではあるが、
バーテンダーさんはそれらのボトルについて説明を始めた。
「じゃあ、順番に飲んでみる。始めはコレで。」
なんとなく、直感で選ぶ。
「飲み方はどうなさいますか?」
「ん?どんな飲み方があるの?」
「ストレート、オン ザ ロック、水割り、ソーダ割りが一般的ですね。」
実はウィスキーの水割りは、昔、田舎のスナックで飲んだことがあったけれど、
その時 水割りってなんか無理(涙) と思ったので、水割りは初めから考えていなかった。
ストレートはアルコールが強烈そうなので、いきなりいくのはこわい。
ソーダ割りは水割りと変わらなそうだし。
というわけで、オン ザ ロックにしてみよう。
「かしこまりました」と丁寧に応えると、
バーテンダーさんは丸く削った氷を取り出し、さらに回りを削ってゆく。
そして削れた氷をウィスキーグラスにコロンと入れると、
ボトルを開け、計量して氷の上から氷を包むように注ぎ込む。
そして、えの長いスプーンでクルクルとなめらかに氷を回してから
お待たせいたしました と私の前に置いた。
人生初、オン ザ ロックのスコッチウィスキー。
おそるおそる、口をつけてみる。
アルコールの刺激と、ウィスキー独特の香り
うん、思ったより悪くない。
初めて水割りを飲んだ時の苦手な感じがない。
喉が一瞬焼けるような刺激がまたくせになりそう。
ひと口、ふた口と、とけた氷との混ざり具合が変化して飲みやすくなる。
最初のを飲み終わり、後から出してくれた水を飲むと、バーテンダーさんがやってきた。
「いかがでした?」
「うん、いい感じ! 次はコレで。」
私の指差したボトルを確認してから、
失礼します と空になったグラスをさげる。
そしてグラスに入っていた氷を取り出し、水でサッと洗う。
それから別のグラスを取り出し、先ほどと同じように洗った氷を入れる。
さっきのグラスより一回り小さい。
どうやら氷にピッタリ合うグラスを選んでいるようだ。
2杯目も堪能し、
3種類飲んだところで終了。
なんとなく違いがわかるようなわからないような。
でも、ウィスキー、なんだか好きになりそうな気がする。